合宿編Part4

f:id:muraha0314:20211214155345j:image⚠️この後微閲覧注意

青い空、白い雲、黒い道。

青いアザ、赤いアザ、黒いアザ。

青い心、白い顔、黒い明日。

f:id:muraha0314:20211109165805j:image左脚(3日目)

それは何気ない日常(当社比)に突如として現れた。

坂道発進。文字通り坂道で車を発進させる、それだけの作業。では手順を確認してみよう。

 

まずは安全確認。いかなる場所であろうとも発進はまず確認。ドライバーの基本だね。

そしてアクセルを強めに回す。登り坂は平地よりもパワーが必要である。

そこからクラッチを徐々に離す。エンジンが静かになったらOK。発進準備は完了だ。

ここまで来たら後は踏みっぱなしの後輪ブレーキを離すだけ。バイクがスルスルと坂道を登っていくぞ!みんなもやってみよう!

 

やってみた!①アクセルを回し、②クラッチを離す。音が小さくなり、シートが沈みこんだ。後は③ブレーキを離すだけ…

 

動かない。ブレーキを離しても進まない、後ろにも下がらない。恐らくエンジンのパワーとバイクの重力が釣り合っているのだ。さて困ったぞ、こうなった時の操作は知らない。クラッチを中途半端に握り続けている左手が疲れてきた。

 

轟音でフッと我に返る。誰のバイクだ?私だ。考える間もなく、CB400SFは私を乗せて暴走。無限の彼方へさあ行くぞ。やめなさいシンジ君ヒトに戻れなくなる。誰かのためじゃなく私自身の願いのために突き進んでみようか。私の願いはこの暴れ馬から降りることです、叶いますか。叶わない。現実は非常である。

暴走したバイクは即座に左のガードレールに突っ込んで止まった。たった数メートルでこうなったのは奇跡だ。ついでに私が怪我ひとつなかったのも奇跡だ。

 

後で聞いた話では、あの時の私はバイクが停止しても右手のアクセルを離さなかったため、タイヤと地面が擦れ続けて煙が上がっていたそうだ。完全に硬直していたのだろう。この煙を走行中意図的に引き起こすテクニックを、バーンナウトというらしい。かっこいいね、私は二度とゴメンだ。

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さて、以降の私はこの大きすぎるトラウマを背負いながら第一段階みきわめ、急制動、第二段階みきわめに挑むのだが、この日以上の大事はなかったので割愛する。

 

 

おまけ

暴走事件の直前か直後のことである。教習が休みの日に私、後輩、R君の3人で浜松駅に向かった。有名な静岡グルメ「さわやかハンバーグ」を食べるためである。アレは相変わらず歌志軒(Part1参照)に行きたがっていた。もしあなたが後輩と旅行に行くことになったら、旅行カバンに猿轡か粘着テープを入れといた方がいい。

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都会の駅ビルというものはいつ見ても圧巻である。謎のブランドがひしめき合うアパレルフロア、カラフルで目に楽しい雑貨フロア、最上階のフードコートでは鉄板や食器の音が胃袋をくすぐる。

山口にもこういう駅ビルの1つでもできればありがたいのだが、Suicaと西瓜の違いも知らぬ山口県民にこんなもの作れるわけが無い。作れるとしても物見櫓、頑張って高床式倉庫が限界だろう。

店の前にはすでに列ができている。さすがに人気店、待ち時間なしと言うわけにはいかない。20分かそこらで済んだことがむしろ幸運であった。店内は強烈な肉の香りで充満しており、空腹に追い打ちをかける。

そこへ店員が目当ての品を運んできた。牛をかたどった鉄板の上に肉の球体。元来ハンバーグというのは俵型に整形され、皿の上で寝そべっているものだ。しかし、このどうやらハンバーグらしいそれは重力に抗いその球体を維持している。どうぞお食べ下さいと言わんばかりに横たわる肉塊ではない。食われるのは私達の方かもしれない。

すると店員がおもむろにナイフを取り出し球体に突きつけた。切り口からは肉汁が溢れ鉄板に滴り落ちる。黄金色の雫はジュッと音を立て、その香りもまた黄金色のカーテンとなってテーブルを支配する。

真っ二つになった肉塊がソースを着飾り、ようやくハンバーグとして目の前に現れた時には、既に私の脳はたった一つの「欲望」で埋め尽くされていた。

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料理というのはつまり人間の餌である。だからこそ人間が食べやすいように、人間の舌に合うように手を加えられるのだ。目の前のハンバーグもその料理の1つであり、今から私に食われる餌なのだ、が。この佇まいは餌と呼ぶにはあまりにも気高く、美しい。これこそが動物にはない、人間だけが持つ価値観。生命を頂くということ。我々は人間として、時折こうして自分が生かされている事実を思い出さなくてはならないのだ。ありがとう。頂きます。

私がこれから喰らう生命、その一口目を口に運ぶ。噛み締める。…!?肉。肉だ。私は肉を食べている。圧倒的弾力。歯で押した分だけ押し戻してくる。その断面からは食前に鼻腔を嫌という程刺激したあの肉汁が滝のように溢れ口内を侵略する。そして舌全体を覆い尽くしても有り余る旨味。

この感動、この感謝を表現できる言葉を見つけられないことが悔しい。地球のどこを探してもないのかもしれない。それでも私は言わなければならない。人間として、生命を頂く者の宿命として。

 

ご馳走様でした。